京都工芸繊維大学美術工芸資料館

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「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」

牧山智恵/Makiyama Chie

◎インタビュー

【2014年】

りんご皿

《りんご皿》2014年

まず、牧山さんの経歴について簡単に教えていただけますか?

私はもともと、粘土で遊ぶことが好きな子どもでした。幼稚園に行く前から紙粘土で物を作るのが好きでしたし、また家族で信楽に遊びに行って、手びねり体験するのも好きでした。その後も、何かを作ることはずっと好きで、高校生のときには美術系の高校、短大も美術系の短大に通いました。そして短大を卒業したあとは、京都府立高等陶工専門校で勉強をしました。この高等陶工専門校は簡単に言えば、轆轤師と絵付け師を育てるための学校なのですが、私は絵付け師のコースで勉強をしました。その学校を卒業した後は、陶器の会社で働いたり、作家さんのお手伝いをしていたりしたのですが、いまはフリーランスで陶器屋さんから預かった生地に絵を描く仕事をしています。高校生の時に陶器に古典文様を使って絵を描いたときに「私がやりたいのはこれかも」と思って、それ以来、ずっと絵付けに興味を持って活動を続けてきました。

りんご輪花鉢

《りんご輪花鉢》2014年

これまでどういう作品を作って来ましたか?

私は今まで古典文様や季節の花や風景をモティーフにした抹茶茶碗やマグカップなどの食器を作ったりしていましたが、最近はリンゴをモティーフとした作品を作っています。深い理由はありませんがたまたまリンゴを描いてみたらしっくりきて、今はリンゴのモティーフを色々アレンジして描いています。最近は器一面をリンゴで埋めるように描くことが私のトレンドです。

絵を描くことになる陶器の成形をされることはないのですか?

成型をすることもありますよ。こういう絵が描きたいというイメージが浮かんで、そのイメージに相応しいかたちに陶器を成形したりします。もちろん、陶器のかたちを見て、そのかたちに相応しい絵を考えることもあります。

りんご皿

《りんご皿》2014年

今回のプロジェクトは「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」と題されていて、参加される方たちの成長を支援することを目的としています。牧山さんにとって「成長」とはどういうことだと思いますか?

私の活動は、大きく分けて職人としての活動と作家としての活動に分かれます。職人の方はお仕事なので、自由に表現するということはあまりありません。いま陶器屋さんからいただいてるお仕事ですと、例えば受け取った10個の素地に、見本と同じ模様を納期厳守で丁寧に描く仕事です。学校を出てすぐの頃に10個の器すべてに同じ模様を描くことは難しかったですが、日々の積み重ねで素早く丁寧に描けるようになってきました。半年や1年前の作品を見ても自分の職人としての成長を見て取ることは難しいですが、10年前の自分が作ったものを見ると、成長しているのだと実感できます。職人としてはやはり日々の積み重ねが成長に繋がると思います。

作家としての成長についてはいかがですか?

毎日絵を描いていますから、技術面では少しずつでも成長していると思います。でも表現の面で成長とは何か、うまく言葉にできません。もちろん作品を作ってきた中で、うまくできた、と思うものも、できなかったものもあります。うまくできた、と思うものを積み重ねていくと成長なのでしょうか。よく分かりません。

apple!

《apple!》 2014年

「これからの、未来の途中」展には、どのような作品を出品されますか?

今度の展覧会には、さきほどお話をしたリンゴのシリーズを出品しようと考えています。リンゴのシリーズの始めのころは、リンゴをいくつか描くだけだったのですが、最近は徐々にリンゴの数が増えてきて、リンゴの器のようになってきました。
作品をご覧いただいた方からはよく「なぜリンゴを描いているのか?」と聞かれますが、単にリンゴが好きだからです。古典文様と組み合わせても違和感が無いようにも思えますし。
私の作品の一つに、よく見るとリンゴが描かれていたり、あるいはリンゴだけではなくて、キノコが描かれたり、おにぎりが描かれていたりするので、近くで、ぜひゆっくり見て欲しいと思います。また、このプロジェクトでは、ふだん接することのない方にも出会えると思いますので、そういう方から率直なご意見をいただきたいと考えています。

◎プロフィール

経歴

1978年

京都府生まれ

2000年

京都府立高等陶工専門校 卒業

主な展覧会

2009〜2014年

  • 「若葉会展」みやこメッセ(京都)

2014年

  • 「Artisanal」空・鍵屋(京都)他、多数