企画|Event
2025.07.05
京都工芸繊維大学繊維アーカイブ作成プロジェクト企画 第2回イベント
シンポジウム「結城紬と蚕業―無形文化財の保存・活用と展望」
京都工芸繊維大学繊維アーカイブ作成プロジェクト企画の第2回イベントとして、下記の要領でシンポジウム「結城紬と蚕業―無形文化財の保存・活用と展望」を開催いたします。
京都工芸繊維大学の前身校のひとつである京都蚕業講習所は、明治32年(1899)の設立です。この1年後の明治33年、日本の蚕の輸出量は、ヨーロッパ最大の生産国イタリアの生産量を抜き、明治42年には中国を抜いて世界一になりました(嶋崎昭典「我が国の製糸業の変遷とこれからの生きる道」『第60回製糸夏期大学記念誌』農業生物資源研究所製糸技術研究会、2007)。まさにこのような時期にあたり、より丈夫で質の良い蚕糸を生産するために設立されたのが京都蚕業講習所でした。それ以来、京都高等蚕業学校、京都高等蚕糸学校、京都繊維専門学校と名称を変えて、昭和49年(1974)に京都工芸繊維大学となりました。本学は、京都蚕業講習所の時代から現代にいたるまで、日本の繊維産業の基盤を支える研究を進めてきました。
蚕糸の生産は、いうまでもなく輸出産業であるだけでなく、国内の伝統的な染織品の製作にも重要です。全国各地の伝統的な繊維産業は、化学繊維の発達をはじめとする時代の変化に押され、いまや守らなければいけない貴重な文化遺産になっています。京都工芸繊維大学では、最先端の技術で繊維の明日を切り開く一方で、京都工芸繊維大学繊維アーカイブ作成プロジェクトをたちあげ、本学が所蔵する繊維関係の貴重な資料類の価値づけをおこなうとともに、伝統的な繊維産業の保護にも目を向けていきたいと考えています。
今回のシンポジウムでは、本場結城紬技術保持会会長の小島章氏、茨城県産業技術イノベーションセンター繊維高分子研究所主任研究員の中野睦子氏をお招きして、無形文化財としての結城紬の現状と保存にかかわる問題点を語っていただきます。結城紬は、ふるく奈良時代に起源をもつわが国を代表する高級織物で、1873年に明治政府がはじめて参加したウィーン万国博覧会にも出品されています。現在、その工程は国の重要無形文化財に指定されています。
それにくわえて、文化庁文化財調査官生田ゆき氏には無形文化財の保存と伝承の現状を報告していただき、蚕の生産と今後の課題を呈示して、無形文化財の保存・活用と今後の展望を考える機会にしたいと考えています。
○日時
2025年7月5日(土)
13:30-17:00(13:00開場)
○会場
京都工芸繊維大学60周年記念館
入場無料、申込不要
13:30 挨拶、趣旨説明 (京都工芸繊維大学美術工芸資料館特定教授 並木誠士)
第1部
13:40-14:10 「無形文化財を記録する―文化庁の取り組みを中心に」
生田ゆき(文化庁文化財第一課 文化財調査官)
14:10-14:55 工芸技術記録映画「結城紬-本場結城紬技術保持会のわざー」
企画:文化庁、製作:桜映画社、平成30年~令和3年、上映(45分)
休憩(15分)
第2部
15:10-15:40 「結城紬の伝統技術と継承」
小島 章(小島紬織物 代表、本場結城紬技術保持会 会長、伝統工芸士)
15:40-16:10 「結城紬の歴史と研究を通して見えてきた魅力と特長」
中野睦子(茨城県産業技術イノベーションセンター 繊維高分子研究所 繊維・紬グループ 主任研究員)
休憩(10分)
第3部
16:20-17:00 全体質疑―ディスカッション
17:00 閉会の挨拶(並木誠士)