「工芸の意匠」第2弾となる本展示では、おもに20世紀初頭に制作された西洋の工芸品の意匠をご覧いただきます。
京都工芸繊維大学の前身校のひとつ京都高等工芸学校では、図案科のデザイン教育のため、1902年の開校から1920年代前半にかけてヨーロッパやアメリカから陶磁器やガラス器、燭台や文具品など多様な工芸品を教材として収集しました。
その意匠は、人物から風景画、動物や植物、異国風のものまで多岐におよび、その表現も絵画的なものから器形自体を装飾化する彫塑的なものまで幅広くみられますが、とくに20世紀初頭フランスを中心に大流行したアール・ヌーヴォーを感じさせる作品が多くみられるのが特徴です。
なかでも、西洋において伝統的なモティーフである女性像を造形的に表現したハンガリーのジョルナイ工房による《エオシン釉婦人像付花瓶》(作品1)は、ギリシャ・ローマの神話にうたわれる三美神を意識させつつも、エオシン釉による玉虫色の発色と髪や衣装の曲線が巧みに表現されたアール・ヌーヴォー期らしい作品です。1853年、建築用タイルの生産を主軸に創業した同工房は、ヴィルモシュ・ジョルナイ(1828-1900)の時代に装飾的な陶磁器生産で一躍有名となり、1873 年のウィーン万国博覧会をはじめ、数々の博覧会で受賞しました。
また、デンマークのロイヤル・コペンハーゲンによる《シジュウカラ模様花瓶》(作品10)やスウェーデンのロールストランドによる《朝顔模様花瓶》(作品19)には、釉薬の下に絵付けをおこなう釉下彩の技術が使用されており、その柔らかく瑞々しい色彩と表現は、アール・ヌーヴォー期に重要な役割を果たしました。
いずれも京都の伝統工芸界にはみられなかった意匠や表現であり、世界のトレンドを知り、新しいデザインを生み出そうとした京都高等工芸学校の意気込みをみてとることができます。
○開催期間
2023年3月27日(月)から6月10日(土)
2023年7月3日(月)から7月29日(土) ※ご好評につき延長します。
○休館日
日曜日・祝日
○開館時間
10-17時(入館は16時30分まで)
○入館料
一般200円、大学生150円、高校生以下無料
*本学の学生・教職員は学生証・職員証の提示により無料で入場できます。
*大学コンソーシアム京都に加盟する大学の学生は学生証の提示により無料で入場できます。
*身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、戦傷病者手帳または被爆者健康手帳をお持ちの方及び付添の方1名は無料(入館の際は、手帳またはミライロIDの提示をお願いします)