京都工芸繊維大学美術工芸資料館

京都工芸繊維大学

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展覧会|Exhibition

2018.4.23 - 2018.6.15

モノクロームの世界ー長谷川潔 銅版画作品展

 長谷川潔(1891―1980)は、1891(明治24)年12月9日に横浜で生まれ、銀行家の父のもとで裕福な家庭の5人姉弟の長男として育ちました。8歳の頃から、美術文芸を愛して多くの文人墨客と交わっていた父親から毎晩のように論語の素読を受け、中国の拓本を手本に書を習わされるとともに、日本画の筆法の手ほどきなども受けてきました。
 20歳(明治44年)のときには葵橋洋画研究所に入り、黒田清輝に素描の指導を受け、翌年には新設された本郷洋画研究所にも通い、岡田三郎助や藤島武二から油絵を学んでいます。このころから木版画制作を開始しますが、それは日本の伝統的木版画とは異なり、版木に直接墨で当たりをつけ、丸ノミなどで絵を描くように自由に彫るといった方法によるものでした。
 やがて、彼の関心は銅版画にも及び、フランスから銅版画用印刷機と付属道具一式を取り寄せ、来日中のバーナード・リーチに銅版画技法について尋ねたりしながら、暗中模索の状態で17点ほどの試作を行います。その後も、版画の制作・研究に専念しますが、次第に洋画や版画を本格的に習得したいという気持ちが強くなり、長谷川はフランスへ渡ることを決意します。
 1918(大正7)年の渡仏後は、あらゆる版画技法を習得しますが、そのなかでも幻の技法であったマニエール・ノワールを熱心に研究し蘇らせたことは、彼の偉大な功績のひとつです。黒の中に白でモチーフを表現するマニエール・ノワールに惹かれたのは、少年の頃に、書道の手本で用いていた黒地に白の文字がくっきりと浮き出た中国の石刷りの拓本が頭に染みついていたことが理由であったと言えます。
 長谷川の手によって深められたマニエール・ノワールの黒、または白の画面に描き出された繊細なモチーフや風景画から、彼の奥深い美的感性を感じていただければ幸いです。

○開催期間
2018年4月23日(月)から2018年6月15日(金)まで
○休館日
日曜日、祝日
○開館時間
10-17時(入館は16時30分まで)
○会場
京都工芸繊維大学美術工芸資料館1階
○入館料
一般200円、大学生150円、高校生以下無料
*京都・大学ミュージアム連携所属大学の学生・院生は学生証の提示により無料