展覧会アーカイブ|Exhibition Archives

2012.5.21 - 2012.7.6

コレクションで辿る 20世紀日本の絵画
Japanese Paintings in the 20th century from the Collection

京都工芸繊維大学美術工芸資料館の収蔵品は、近現代ポスターや建築図面が中心ですが、 近代美術を彩る絵画作品も700点近く所蔵しています。絵画コレクションの核となっているものは二つあります。
一つは、浅井忠や霜鳥之彦など、京都高等工芸学校の教員が残した20世紀初頭の洋画の数々です。 東宮御所の緞帳製作のための原画となった武士山狩図(浅井忠、1905年)や当時の京都の様子を描いた風景画などが並びます。
もう一つは、1950年代から60年代の日本の前衛美術作品群です。 これは、京都高等工芸学校色染科の卒業生で大橋化学工業株式会社社長であった故大橋嘉一氏が収集された現代美術コレクションで、 1978年に500点強の作品が当館に寄贈されました。 戦後日本の人間像を描く小山田二郎や桂ゆき、線がリズムを刻む難波田龍起、 「人のマネをするな」をモットーに実験的な作品を制作した具体美術協会の白髪一雄や元永定正、 そして1960年代に海外へと活動の場を移す工藤哲巳や草間彌生の初期小品などなど。 それらは、戦後復興と並行して欧米の最新美術動向を吸収しながら、新しい日本の美術を作り出そうと、 熱い思いを絵具の迸りに賭けた時代を象徴しています。
本展覧会では、このような所蔵絵画作品から100点あまりを選りすぐり、 「洋画」が「現代絵画」になるまでの20世紀日本の絵画を辿ります。

○開催期間 2012年5月21日(月)から2012年7月6日(金)まで

◎メールニュース(2012.5.24)

美術工芸資料館では5月21日(月)より「コレクションで辿る 20世紀日本の絵画」展を開催しています。
今後、不定期ですが展示作品の紹介をしてゆきますで、ぜひご覧ください。

「コレクションで辿る20世紀日本の絵画」展 この一点

草間彌生
《作品》
1954年
水彩、インク、色紙
(AN.3229)

水玉とカボチャで若い女性を中心に人気が沸騰している草間彌生。齢80を超えて世界のアートの最前線を走り続けています。少女時代から統合失調症による幻覚や幻聴をコントロールするために描き始めた絵画が、早くから注目されました。
今回展示されている作品は、彼女が25歳の時に描いたドローイングです。暗闇に浮かぶぼんやりとした光の輪。色紙をカットして貼った赤い草の間からは光に向かって蔓のような触手のような細い線が伸びています。光輪の中には小さな生物にも見える形がふわふわと漂っています。水玉で表面がびっしりと覆われる作品に至る前の、草間の心の奥底にある風景を覗き見るかのような静かな絵画です。
意外と目立たない作品かもしれません。どこに展示されているか、探してみてください。

◎メールニュース(2012.6.18)

「コレクションで辿る20世紀日本の絵画」展 この一点

小山田二郎
《池》
1961年
油彩、キャンバス
(AN.2750)

1934年に帝国美術専門学校に入学し西洋絵画を学んだ小山田二郎は、第二次世界大戦後の日本の変化における様々な矛盾や不安をテーマに絵画を描きました。 今回展示されている《池》では、黄色い大地の中心にぽっかりと開いた巨大な穴のような池の周囲に、奇妙な姿をした人間が配されています。バラバラの部位が組み合わさせてできたようなやせ細った体、うつろな眼はなにをみているのでしょうか。池で魚をつろうとしてるのか、穴に入ろうとしているのか定かではありませんが、黒い塊は人間の不安や恐怖が形になって現れているかのようでもあります。小山田の「池」は、敗戦後の虚脱と戦後復興の狭間で彷徨う日本人の心情風景として見るものに迫ります。