京都工芸繊維大学美術工芸資料館

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展覧会アーカイブ|Exhibition Archives

2011.2.7 - 2011.5.8

もうひとつの京都−モダニズム建築から見えてくるもの−
Modern Architecture in Kyoto

本展覧会は、1920年代から1970年代に建てられた、京都におけるモダニズム建築の軌跡をたどることを通して、 モダニズム建築の価値とその持つ意味を顕在化させ、 あわせて、長い木造文化の伝統をもつ京都という地域特性との関係性についても再考しようとする試みです。
ここでいうモダニズム建築とは、工業化を前提に、合理主義と社会改革的な思想を背景にして、 装飾を排する抽象的な形態と、外観だけではなく空間構成を重視したデザインを志向した近代建築のことを指しています。
モダニズムという考え方自体は、20世紀の初頭にヨーロッパを中心に生まれ、 その思想にもとづいた建築は、世界的なスケールで展開されました。
そこには、科学技術の進歩を前提とする普遍性をもった世界共通の方法を求めようとする共通認識が見られます。
けれども、同時に、建築は、必然的に、気候風土の違いや地域的な特性、伝統とのつながりなどの影響を受けるものです。
そのため、モダニズム建築は、実はその当初から、国や地域による違いについても議論されてきました。
そして、近年のモダニズム建築の再評価という趨勢の中においては、一枚岩的だと単純に理解されてきた枠組みを相対化し、 むしろ、地域や国によって、独自の展開を遂げたことに目を注いで、 そうした広がりの中で、改めてモダニズム建築とは何だったのか、を再検証し、そこに流れている思想を現代において再評価しながら、 これからの建築や都市を考えるための貴重なヒントとして共有しよう、とする動きが顕著になってきています。
こうした中にあって、1200年の歴史を持つ古都・京都は、関東大震災によって過去と断絶し、 太平洋戦争の空爆によって焦土と化した東京や大阪とは異なり、ほとんど無傷なまま、長い木造文化の伝統と歴史的な町並みが連続してきた極めて特殊な都市です。
本展では、その京都において、モダニズムの思想がいかに受容されたのか、また、京都という場所を建築家たちはどのようにとらえて設計を行ったのか、 明治以降の近代化と西欧化の流れの中でモダニズムへの転換はどのように進んだのか、など、 これまであまり意識されてこなかった視点で、1920年代から1970年代までのモダニズム建築を概観します。
そこに立ち現れて見えてくるのは、伝統と現代をつなぐ貴重な文化の水脈であり、もうひとつの京都の姿です。
そして、この作業を通じて、戦前/戦後という従来の枠組みにとらわれることなく、一続きの流れの中でモダニズム建築の持つ価値と意味について広く共有し、それら全体が未来へ向けた貴重な文化遺産であることを確認する機会としたいと思います。

○会期
2011年2月7日(月)から2011年5月8日(日)まで
○休館日 /
日曜日・祝日

◎関連企画

シンポジウム
モダニズム建築と京都をめぐって
2011年4月9日(土)  14:00 - 17:00
@京都工芸繊維大学60周年記念館
○パネリスト
内藤廣(建築家・東京大学大学院教授 副学長)
前田忠直(建築家・京都大学名誉教授)
石田潤一郎(京都工芸繊維大学大学院教授)
○司会
松隈洋(京都工芸繊維大学美術工芸資料館教授)
○参加費  無料
○定員  200名
○申込  不要(当日先着順)

▽スケジュール
14:00 - 14:15
挨拶
松隈洋(京都工芸繊維大学美術工芸資料館教授)
14:20 - 15:00
基調講演1 「京都から考える今建築に求められること」
内藤廣(建築家・東京大学大学院教授 副学長)
15:10 - 15:50
基調講演2 「建築家・増田友也の思索と建築作品」
前田忠直(建築家・京都大学名誉教授)
16:00 - 17:00
シンポジウム「京都のモダニズム建築の特質(仮)」
○パネリスト
内藤廣(建築家・東京大学大学院教授 副学長)
前田忠直(建築家・京都大学名誉教授)
石田潤一郎(京都工芸繊維大学大学院教授)
○司会
松隈洋(京都工芸繊維大学美術工芸資料館教授)