京都工芸繊維大学美術工芸資料館

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展覧会アーカイブ|Exhibition Archives

2010.8.9 - 2010.10.1

ここにもあった匠の技 −機械捺染−

昭和初期にあって、庶民が普段着として身につけていた着尺地の染色の多くには、機械捺染の技法が用いられ、 庶民の衣生活は大いに華やいだものとなりました。
機械捺染の技法は、明治後期に西洋から京都に移植された凹型円筒捺染機つまりローラー捺染機によるものが日本における嚆矢です。
その後、印刷式捺染機やスクリーン型繚染機も開発されますが、 ローラー捺染機が日本にはじめて導入された機械捺染機であることに加え、 昭和前期あたりまで普及率が最も高く、そのために我が国では当時、機械捺染といえばローラー捺染を意味するほどでした。
庶民には高嶺の花であった文様が、この量産性の高い染色技法の普及によって身近なものとなり、 一般女性の多くが気軽におしゃれを楽しむことができるようになったのです。
本展は、京都の繊維産業技術の変遷のなかに、このローラー捺染の位置づけを試為るものです。
ローラー捺染は、大量生産を目指す織維産業の近代化の流れのなかで脚光を浴びたわけですが、 一方で大量生産てあるがゆえの安価な製品イメージにより、低い評価しか与えられてこなかった傾向があります。
そして、近代繊維産業の調査研究の対象としても、これまで見過ごされてきました。
そのうえ、需要が急速に落ち込んだ現在にあって、この技法は過去のものとして、次第に忘れ去られてゆく可能性もでてきました。
しかし、流行や人びとの好みに柔軟に対応し、時代のデザイン傾向の形成に多大なる貢献をしたという点において、 ローラー捺染は、産業史あるいは染織史や服飾史研究、さらには風俗研究の分野で、取り上げるにふさわしい研究対象であるように思えます。
そのような観点から私たちは、明治時代後半から現代にいたるローラー捺染の実態について調査・研究を進めてきました。
ローラー捺染を、この危機的現状のなかで広く紹介し、改めてこの染色技術の意義を問い直す機会にしたいと思っております。
加えて、調査を進めていくうちに見えてきた事実は、機械生産というイメージの影にかくれていた関係者の技術開発に対する努力や匠の技です。
図案、布見本、写真、動画などの展示資料から、捺染生地ができあがるまでの各工程に、 それを支える職人の故があることを感じ取っていただければ幸いです。

○会期
2010年8月9日(月)から2010年10月1日(金)まで
○休館日
日曜日・祝日

◎関連企画1

ミュージアムツアー
2010年8月10日(土)  16:00 〜
@美術工芸資料館
展示資料木製凸版ローラー捺染機の仕組みについて実演をまじえての解説もあります。
○申込不要