中欧に位置するチェコは、首都プラハを中心に古くから豊かな芸術・文化を育んできました。
しかし第二次世界大戦以降、共産主義政権が成立すると芸術的表現の土壌も大きな変化を余儀なくされます。
1980年代末に共産主義政権が崩壊するまで、チェコにおいて映画や展覧会のポスター・デザインは、
自由な表現活動ができる数少ないメディアの一つでした。
そのため、画家やグラフィック・デザイナーなどの優れた才能が結集することになりました。
素材を大胆な解釈で料理し、軽妙さと洒脱さを兼ね備えたオリジナリティ溢れるデザイン・スタイルを確立したのです。
特に映画ポスターは、西欧のポップアートやサイケデリックアートの影響を感じさせるものから、
20世紀初頭のコラージュやシュルレアリスティックな表現を現代的に解釈したものまで見られ、多様な表現の実験場であるかのようです。
1922年生まれのヨーゼフ・フレイシャーも、そのような状況下で活動を続けてきたデザイナーの一人です。
1990年代以降は、チェコを代表するポスター・デザイナーとして活動の場を国外にも広げ、
1998年には、パリで開催されているWorld's Most MemorablePoster Competitionで大賞を受賞しています。
歌劇やバレエの公演ポスターの数々や、
チェコを代表する小説家フランツ・カフカの業績を紹介する「エクスポジション・フランツ・カフカ」の一連のポスターなど、
自由な筆致のドローイングを元にしたヨーゼフ・フレイシャーのデザイン感覚は、
即興性と構築力の見事な融合を見せてくれます。
本展覧会では、フレイシャーの代表的なポスター約40点を中心に、1960-70年代のチェコで生み出された映画や展覧会のポスターなど、
これまで日本であまり紹介されることのなかった貴重なポスターの数々を展示します。
○会期
2009年3月23日(月)から2009年5月1日(金)まで
○休館日
日曜日・祝日