ポスターはすぐれて近代産業ならびに都市文明の産物であって、芸術作品として誕生した訳ではない。
時間を経て、芸術作品として扱われるようになったのも多くはない。
欧米ではポスターが印刷技術の発達と相侯ってある無秩序の観を呈しつつ隆盛を極めたのは、
他ならぬ19世紀末から20世紀初頭に大衆に事を訴えるため、
ポスターを含めた「広告」に大いなる力を振る舞っていた事、
そして日本独自の広告文化が展開されていた事はよく知られている。
1945年8月、我々が敗戦によって、荒涼とした戦後世界から再び出発する事になった。
平和な時代に華を咲かせたポスターの如きものは、荒んだ社会では、まずはかなわぬ夢である。
我々が知っているのは“made in occupied Japan”からの出直しであったが、これも既に記憶は薄らいでいる。
戦後日本が国際的な舞台におずおずとした再登場を果たしたのは、
1957年、棟方志功らが脚光を浴びることとなった「サンパウロ版画ビエンナーレ」と1959年「第三回アジア大会」であった。
「日宣美」が展開した活動もあり、更に、東京オリンピック(1964)、大阪万国博(1970)、ポスターは鮮明に焼き付いている。
一方で、産業界の目覚ましい復興期に、束の間ではあるが、強烈な印象を与えるよう仕組まれ、
そして忽ち忘れ去られていった多くの商品ポスターが生み出されたことも、我々は同時に体験している。
商品はもとより、観念や理念と言った普通では商品にされないものまでも扱うようになる傾向が70年代位以降、
いよいよ顕著になり、果たしてこれはなにを訴えたいのか、一瞥であってはならない広告図像、
すなわちポスターが街角に溢れかえるようになった。
記念的ポスターを始め演劇、映画、更には銀行や官公庁ポスターを含め、
こういった20世紀後半のポスター現象を館蔵資料101点により追体験しよう、というのが今回の企画である。
○会期
2004年9月14日(火)から2004年11月7日(日)まで
ギャラリートーク
2004年11月3日(水) 13:30 〜
@京都工芸繊維大学美術工芸資料館
○講師
竹内次男(京都工芸繊維大学教授)