京都工芸繊維大学美術工芸資料館

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企画|Event

2026.2.21

京都工芸繊維大学繊維アーカイブ作成プロジェクト企画 第3回
シンポジウム「京都工芸繊維大学―近代京都の蚕業と染織―」
シンポジウム「京都工芸繊維大学繊維アーカイブ作成プロジェクト企画第3回シンポジウム 京都工芸繊維大学―近代京都の蚕業と染織―」
 明治32年(1899)に、京都蚕業講習所が、明治政府の重要な産業政策のひとつであった蚕業研究における西日本の拠点となるべく設置された。また、明治35年には、京都の伝統工芸の近代化を理論的・学術的にバックアップする目的で京都高等工芸学校が開校する。両者は合体して、昭和24年(1949)に京都工芸繊維大学となる。一方で、東京でも、前身組織を受けて明治32年に東京蚕業講習所が設立され、それが昭和24年に開学した東京農工大学繊維学部となる。東京・京都の蚕業講習所は、それぞれ東日本・西日本の蚕業を支える機関として明治期における絹糸の生産に対して重要な役割を果たした。
 京都工芸繊維大学繊維アーカイブ作成プロジェクトでは、これまで2回のシンポジウムを開催して、久米島紬、結城紬といった、わが国繊維産業の歴史的視点からも、また、保存すべき無形文化財としても重要な位置を占める産業をテーマにシンポジウムを開催してきた。今回は京都の染織産業に焦点を当てて、近代国家形成期における最重要産業であった染織産業が、京都においてどのように形成され、発展してきたのかという点に注目してみたい。
 シンポジウムでは、東京農工大学科学博物館の齊藤有里加先生に東京での蚕業指導の実態について報告をお願いし、つぎに、本学の長岡純治先生から近代京都の蚕業界において京都蚕業講習所が果たした役割について報告していただく。その後、『〈染織の都〉京都の挑戦―革新と伝統―』(吉川弘文館、2025)の著者である北野裕子先生から、近代京都の染織産業界の状況についてご報告いただく。後半では、上記3名の発表者に、文化庁文化財調査官(無形文化財担当)の生田ゆき氏を加えて、蚕糸・繊維産業のこれからを視野にいれたディスカッションをしたい。
 なお、このシンポジウムは、美術工芸資料館で開催中の展覧会「京都工芸繊維大学―近代京都の蚕業と染織―」と連動している。同展は、京都蚕業講習所と京都高等工芸学校というふたつのルーツをもつ本学が、京都の伝統産業の近代化にどのような役割を果たしたかという点について、糸と布を題材として考えようとするものである。経糸と緯糸により布ができあがるように、このふたつの前身校は、それぞれが京都工芸繊維大学の重要な基幹を形成している。その歴史を「モノ」を通して検証してゆくことを目的としている。今回のシンポジウムでは、本場結城紬技術保持会会長の小島章氏、茨城県産業技術イノベーションセンター繊維高分子研究所主任研究員の中野睦子氏をお招きして、無形文化財としての結城紬の現状と保存にかかわる問題点を語っていただきます。結城紬は、ふるく奈良時代に起源をもつわが国を代表する高級織物で、1873年に明治政府がはじめて参加したウィーン万国博覧会にも出品されています。現在、その工程は国の重要無形文化財に指定されています。それにくわえて、文化庁文化財調査官生田ゆき氏には無形文化財の保存と伝承の現状を報告していただき、蚕の生産と今後の課題を呈示して、無形文化財の保存・活用と今後の展望を考える機会にしたいと考えています。

        

○日時
2026年2月21日(土)
13:00-17:00(12:30開場)
○会場
京都工芸繊維大学60周年記念館

入場無料、申込不要
※シンポジウム終了後は18時まで展覧会をご覧いただけます。


13:00 挨拶、趣旨説明 (京都工芸繊維大学美術工芸資料館特定教授 並木誠士)

第1部
13:10-13:50
「東京蚕業講習所における蚕糸教育の展開——科学知の導入から産業指導までの150年」
齊藤有里加(東京農工大学科学博物館 学芸員・特任助教)

13:50-14:30
「京都蚕業講習所から京都工芸繊維大学へ―日本の蚕糸生物学・蚕業発展を支えた中核的学術系譜―」
長岡純治(京都工芸繊維大学応用生物学系 准教授)

14:30-15:10
「近代京都染織業の革新と伝統―「染織の都」への道―」
北野裕子(龍谷大学・京都女子大学 非常勤講師)

休憩(15分)

第2部
15:25-16:50
ディスカッション 「蚕業と産業―〈染織の都〉のこれまでとこれから」
齊藤・長岡・北野・生田ゆき(文化庁文化財第一課 文化財調査官)・並木

16:50  閉会の挨拶(並木誠士)