京都工芸繊維大学美術工芸資料館

京都工芸繊維大学

京都・大学ミュージアム連携

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Kyoto Institute of Technology

展覧会アーカイブ|Exhibition Archives

2011.1.24 - 2011.2.24

手の中の世相 −マッチラベルコレクション−

マッチという言葉は、いまや死語になりつつあるのかもしれない。
いまの子どもたちに「マッチ一本火事の元」という標語は有効なのだろうか。
子どもの火遊びの大半がライターによることに何の疑問も抱かなくなって久しいと思う。
しかし、かつてマッチは、つねに生活の中心にあった。
花火や蚊取線香をつけるのもマッチだったし、鍋料理で活躍するのもマッチだった。
そして、喫茶店や居酒屋、旅館などには、かならずその店の名前を記したマッチが置いてあった。
客が出入りするほとんどの店が独自のマッチを名刺がわりにつくっていたといってもよいだろう。
マッチは間違いなく小さな広告塔だった。
広告塔であればこそ、それぞれの店は趣向をこらしたマッチを作るようになる。
客の記憶に残るようなマッチを考えるのだ。
すこしでも他の店と違う印象的なマッチをつくろうという工夫が、その小さな世界には込められている。
そこには、さまざまなデザインや字体、絵柄が展開している。
時代の最先端をゆくものが描かれたり、時世の様子を反映した図柄が使われたり、一方で、定番化した古典的な絵もある。
しかも、無料で頒布するものだから、安価につくる必要がある。
そのためには、色数も少なくすることも求められた。
それでもなお、人の目を引くにはどうしたら良いかという点にマッチラベルの多様な工夫のおもしろさがある。
そして、だからこそ、普通なら使い捨てられるマッチを、そのデザインの魅力にとりつかれて、それを収集しようとする人もあらわれる。
マッチラベルコレクターは、小さな広告塔に魅せられた人たちだ。
京都工芸繊維大学美術工芸資料館には、そのようなマッチラベルコレクターたちが集めたマッチラベルが大量に収蔵されている。
それは、印刷技術やデザインさらには社会の風俗を反映している。
教材としてのマッチラベルだ。
今回の展覧会では、美術工芸資料館が所蔵するマッチラベルを展示することにより、
人びとが小さな広告塔に託した思いを味わっていただきたいと思う。
懐かしささえ感じさせるマッチラベルの多様で豊かな世界をお楽しみ下さい。

○会期
2011年1月24日から2011年2月24日まで