京都工芸繊維大学美術工芸資料館

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Kyoto Institute of Technology

展覧会アーカイブ|Exhibition Archives

2003.4.8 - 2003.6.1

かくれんぼ ファッションの意識改革−Fashion without Body−

ファッションは芸術なのか、デザインなのか。それとも、社会と同化する道具なのか。
ハイ・ファッションでもなくストリート・ファッションでもない、何かが生まれようとしている。
展示室を一部改装し、通年開館をはじめた京都工芸繊維大学のアート&デザイン・フォーラムで、 ファッションの新しい可能性を探る。

個性のなかに閉じこもらないで、自分と社会との共通部分を探してみること。
こんな現象が、ファッションの分野でも目立ちはじめています。
ファッションの新しい風といえば、一般的にはパリコレクションのように、意表を突いたり、 今まで見たことのないものを創作することだと思われがちです。
ですから、このところの現象は、そうした社会通念にたいする批判であるように見えるかもしれません。
しかしこの現象は、芸術の今日的動向から派生したものでもありました。
現代では芸術自身がその自律性や超俗性、そして、そこから生じる激白な表現というものを疑問に思いはじめ、 日常性のなかにこそ芸術の根っこがあると考えだしたからです。
この展覧会の「かくれんぼ」というタイトルも、社会とコミュニケーションを取ろうとするそんな気持ちと、 そしてまた一方で、自分の個性にこだわろうとする気持ちとのあいだで揺れる
今日のファッションデザイナーたちの制作状況を表したものです。
荒川眞一郎は「制服」をキータームにして、ファッションが生みだす街角の個性的雰囲気に着目ています。
津村耕佑はファイナルホーム(FINAL HOME)という作品によって、 公共とプライベート、との区別が曖昧になりつつある現代社会では、 純粋に私的な空間は服にしか残されていないと訴えます。
アネッテ・メイヤーは包装紙や雑誌の表紙などのラッピング・マテリアルで服をつくることによって、 服が内包されるものと外部に存在するものとを区分けする、インターフェース(境界面)であることを示しています。
月岡彩は清涼飲料水の自販機と見紛うスカートをつくり、これを着て街に出没することで、 ファッションには動物の擬態のように、環境との同化機能があることを教えてくれます。

津村耕佑 Tsumura Kosuke (1959−)
1959年埼玉県生まれ。独学で洋裁を学び、1982年第52回装苑賞を受賞。
東京デザイナー学院を中退、1983年三宅デザイン事務所入社。
「イッセイミヤケ」ブランドで実験的なデザイン活動を続け、1993年秋「K・ZELLE」のブランド名でバックを発表。
1994年秋冬パリ・コレクションで数十個のポケットを持つナイロン製コート「ファイナル・ホーム」を発表。
都会でのサバイバルを視野に、現代のリアリティある服作りを目指す。
同年毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。
2000年には、ヴェネツィア建築ビエンナーレに参加。
ファッションデザインとともに、インスタレーションをはじめとする現代美術の分野でも幅広い活動をおこなっている。

荒川眞一郎 Arakawa Shinichiro (1966−)
1966年群馬県生まれ。
1989年渡仏。
1991年渡英し、クリストファー・ネメス氏のアシスタントを経験する。
1992年パリ・スタジオベルソー学校を卒業、パリでインディーズデザイナーとともにコレクションを発表。
1993年にパリ・コレクションに初参加。その後も1994年春夏パリ・コレクション、1995年秋冬東京・コレクションに参加。
1997年フランス文化省のANDAMコンクールで金賞を受賞。
1999年には「2000 A/W PARIS collection」を発表。
絵画のように壁に貼り付けられた服。その前で同じ服を着て立ち止まるモデル。
これによって2次元と3次元のコントラストを浮かび上がらせる仕事を試みた。

アネッテ・メイヤー Annette Meyer (1966−)
1966年デンマーク生まれ。
ユトレヒト芸術学院ファッションデザイナー科(オランダ)及びアントワープ王立美術学校(ベルギー)を卒業。
1992〜1996年デンマークのパフォーマンス・グループ「ホテルヴロ・フォルマ」の舞台衣装デザインを手掛ける。
1997〜1999年デ二シュ・デザイン・カレッジ(デンマーク)のファッション学科長に就任。
1996年からラッピングマテリアルを使った作品を発表。1998年ニューヨークで、「BODYWRAPPlnc.NY」を開催。
BODYWRAPPlnc.は、ヨーロッパ、北アメリカ、アジアの3大陸各国で入手した包装紙を素材につくられた服のシリーズ作品を、
3大陸で発表するプロジェクトで、2001年には京都芸術センター、東京のスパイラル・ギャラリーで発表された。

月岡彩 Tsukioka Aya (1978−)
1978年愛媛県松山市生まれ。
2000年武蔵野美術大学空間演出デザイン学科を卒業。
スカートが自動販売機に早変わりする、「新カクレンボ大作戦DX」と題した一連のプロジェクトを
街中でおこなうなど、面白味のあるアートを発表。
2001年第2回SICF(スパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル)でグランプリを受賞。
2003年には、第2回「大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2003」に参加予定。

○会期
2003年4月8日(火)から2003年6月1日(金)まで